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本を読みました:生江有二著 『黄金伝説』

 生江有二さんの『黄金伝説』という本を読みました。これは『山下財宝 フィリピン黄金伝説を行く』という本の文庫版です。ややこしいですが、写真は文庫版じゃない方です。
 表題の通りいわゆる山下財宝の正体を探る都市伝説ハンティングを主旋律に太平洋戦争でのフィリピン戦の話を浮かび上がらせる作りになっています。長いけれども濃厚なドキュメンタリーで非常に読み応えがあります。
 山下財宝といってもピンとこない方も多いかもしれませんが、「ヤマシタ・ゴールド」といえばM資金やスイス銀行に隠匿されたナチスの資金などと並んで世界でもわりと有名な財宝系の都市伝説といえると思います。余談ですが、先日フィクションですが『日輪の遺産』という映画を見ました。こちらではM(マッカーサー)資金とヤマシタ・ゴールドが同一のものとして描かれていました。
 簡単にいえば、時の山下奉文陸軍大将が戦時中インドシナ半島、満州を転戦する中で多大な金銀財宝を収集し、それらを最後の赴任地になったフィリピンに持ち込んだといわれており、その財宝を降伏にあたりフィリピンのどこかに隠匿したというのが山下財宝伝説です。
 伝説には尾ひれがついており、マルコスがその財宝の大半を掘り返したとか、黄金の仏像があるとか伝説が伝説を呼んで話が今も膨らんでいっているような現状かと思います。私自身、ルソン島から遠く離れたシキホール等でいきなり知らないおじさんから「山下ゴールドの地図があるぞ」と声をかけられたことがあります。
 余談が過ぎましたが、本の内容としてはヤマシタ・ゴールドの話そのものと遺族会の慰霊ツアーの同行記が二本柱となっており、さらにその二本柱がツイストして絡み合っています。育江さん自身はハナから黄金伝説にははなからかなり懐疑的な感じなのですが、敢えてそのヤマシタ・ゴールドの幻を追うことでフィリピン戦の相貌を表してゆくところがスリリングです。
 フィリピン人トレジャーハンターの生態が描かれているのも貴重なのではないでしょうか。
 またまた私の話になりますが、私の知人にもトレジャーハンターがおり、ちょっと私の感覚からは理解できない真剣さで事にあたっています。あまり詳しいことは書けないですが、「もし出たら」全世界を巻き込んだ大変なコトになるのを本気で覚悟しておられます。財宝が出た瞬間の命の確保のことも真剣に考えておられました。
 とにかくもしフィリピンにご興味がなくとも、読み物としてもかなり面白いのでグイグイ読めます。大推薦です!

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