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浜なつ子著『マニラ行き 男たちの片道切符』

 フィリピン関連の本はいろいろありますが、私がフィリピンに行く前に読んでガツン!とやられたのがのが浜なつ子さんの『マニラ行き 男たちの片道切符』と『死んでもいい マニラ行きの男たち』でした。出版された順は『マニラ行き』→『死んでもいい』の順で、順に続けて読んでさらにおいしい二冊と言えると思います。
 知人の女性の方が「エルミタ君フィリピン行くの?おもしろいから行く前に読んで!」といってわざわざ手持ちの本を送ってくれました。

 『マニラ行き 男たちの片道切符』の方はフィリピンに翻弄され、片道切符でマニラに行ったまま帰ってこない(取材時には日本在住の萬亀さんものちに帰ってこなくなる)男たちの姿が描かれていて、もうものすごい話のオンパレード。どの話もなかなかに悲惨な話で、「マニラてどんなとこやねん!」とツッコミを入れざるを得ません。自分が「こうなる」のは絶対にいやな話ばかりなのですが、運命と戦いながら、もう決して後ろを振り返ることができなくなった男たちのタフに生きる様が悲しくもおかしな話として鮮やかに浮かび上がってきます。

 お話は全部おもしろいのですが、特に第1章の「壊す」と第4章の「消える」、第5章の「戻る」あたりが私の胸を打ちました。「壊す」の話がこの本の基本ライン、フィリピンという言わば沼のようなものに入っていく様を示しているようなところもあり、フィリピンの女性を好きになりそうになるたびに自分自身もこの「壊す」に出てくる沢井さんみたいになってしまうんかな……と考え込んでしまうのです。「消える」の坂田さんには少し憧れるような感じもあります。その気高さに乾杯。「戻る」の話はとにかくすごい好きな話です。こういう人たしかにいそうだけど、話の主人公の萬亀さんはなんせ豪快。そして能天気。親戚にこんなおっさんがおったらシバきますけどね。他人だったらこれほど気持ちのいい人はいません。

 『死んでもいい』も読むとすごくおもしろい本なのですが……正確に私の感想を言うと『マニラ行き』の最終章である第6章から『死んでもいい』までと『マニラ行き』の第5章までとでは著者の浜さんの取材対象との距離の取り方が少し変化しているような気がして素直に入って行けない感覚があります。でも私に本を送ってくれた方は『死んでもいい』のほうが面白いと言ってました。

 とにかく『マニラ行き…』の第5章までは私にマニラに対する鮮烈な先入観を刻み込んでくれました。エルミタ〜マラテを中心に話が展開していることもあり、実際に度々マニラに通うようになった今もこの『マニラ行き…』で読んで得たイメージと自分が見たものとを重ねながら街を歩いています。
 余談ですが『マニラ行き…』の第6章に出てくる後藤さんというのは日名子暁さんの『マニラ好き』に出てくる後藤さんと別人物なのでしょうか?キャラクターは少しカブるような感じもします。下の名前は違うし書かれている経歴も違うような気もしますが……。

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