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バナハオ山(Mt. Banahaw)その1/5

 2014年、キリスト教国ではお盆にあたる(と私は思っている)オール・ソウルズ・デイ(11月2日)のあたりにケソン州のバナハオ山(Mt. Banahaw)というホーリープレイス(日本で言うところのパワースポット)が点在する山に行ってまいりました。バナハオ山には聖地移転のいわれがあり、ホーリーマウンテンとしてフィリピンでも人気のある場所です。
 この山の麓のドローレス(Dolores)という街のサンタ・ルチア(St. Lucia)〜キナブハヤン(Kinabuhayan)にかけてはそのホーリープレイスを巡礼して歩く人も多いとの話を『NIKKEI GALLERY』のWEBに掲載されている澤田公伸さんの記事で読み、これは私もぜひ巡礼をせねばといきり立ってビバリーとともに出かけたのでした。

 山に行くにあたりほかにも資料をあたったのですが、同じく澤田さんの筆による『まにら新聞』Web内「祈とう治療師の集う霊山」との記事を見ることができ、鹿児島大学の研究で寺田勇文さんという方の『聖地バナハオ巡礼をめぐって』という報告、さらには文化庁の平成17年3月の日付が入った『海外の宗教事情に関する 調査報告書』という報告書でも寺田さんがバナハオ山周辺の宗教の事情について触れておられます。

 なんでも100を超える新興宗教の拠点がこの山の麓にあるとのこと。WEBでも事前にその辺りの景観を見たのですが、いかにも山の中の村という風情の風景の中にあのアメリカの1ドル紙幣でもお馴染みの三角形の中に目が描かれたサインがそこいらじゅうに掲げられており、ミステリアスなヤバイ雰囲気がビンビン伝わってきます。巡礼コースに関してはサンタ・ルチアをスタートして点在する洞窟や岩、滝などのホーリースポットをめぐり、ゴールはキナブハヤンにある川の中のキリストの足跡が残る岩の下流で沐浴をするというもの。時間は6〜7時間を要するといった感じでありました。

Kinabuhayan Cafe, Bed & Breakfast

 日本出発前から上記のような資料を読み込み、山中での巡礼というハードな活動を目論む中、日帰りでは心許ないので宿泊施設を探し「キナブハヤン・カフェ・ベッド&ブレックファースト(Kinabuhayan Cafe, Bed & Breakfast)」というB&Bを見つけ、フェイスブックページから連絡を取り2泊分の予約を入れました。ただ、ここに着くまでわかっていなかったのですが、私はこのキナブハヤン・カフェがある場所がキナブハヤンなのだと思い込んでいました。だってキナブハヤン・カフェ・ベッド&ブレックファーストなんだから。そこがキナブハヤンにあると思うじゃない?しかし実際にはこのキナブハヤン・カフェはキナブハヤンにあるわけではなく、ドローレスという街の中心地にあったのです。
 というのも、いつも旅行の交通手段に関してはビバリー嬢の指導を仰いでいるのですが、このときはマニラからバスにとジプニーを乗り継いで3時間ほど、いきなりこのキナブハヤン・カフェに着いて、私は「え?」と思ったんですよね。「いやいや、ビバリー君。キナブハヤンというのは山深いところにひっそりとある聖地ですよ?こんなジープに乗って易々と来るべきところやないんですよ。サンタ・ルチア村からいろん聖地を巡って6〜7時間かけて苦労して苦労して汗だくになってヘトヘトで這うようにしてやっと辿り着くのがキナブハヤンなんじゃないのかね」といきなりキナブハヤン(とおもわしきキナブハヤン・カフェ)に案内したビバリーを思わずネチネチと問い詰めてしまいました。ビバリーも最初は私が何をブツブツ言っているのか理解できないようでしたが、聡明な彼女は程なく私がキナブハヤン・カフェのある場所がキナブハヤンであるとカン違いしていることを理解して「エルミタ君ちがいますよ。ここはキナブハヤンではありません。キナブハヤン・カフェというのは単なる店の名前であってここはキナブハヤンではありません」と諭してくれました。たしかに話に聞いたのとは違ってえらい開けたところだなとは思ってました。

 このキナブハヤン・カフェがなかなかすごいところで、ひとことでいえば一本の大きな木の上に部屋をいくつか設置したツリーハウスなのです。そのツリーハウスの空き部屋を客に提供してくれるというわけです。フィリピンではツリーハウスをよく見かけますが、ここのツリーハウスは客に貸し出すだけのことはあってかなり立派なものでした。樹上ということもあってシャワーが不調であるなど設備には万全ではないところもありますが、ツリーハウスで過ごすのはそんなマイナス要素を補ってあまりある楽しい体験であります。ただ料金体系がちょっと変わっていて、宿泊の料金は0ペソ。朝昼晩の食事代を払えばこのツリーハウスで泊まってもよいというものでした。そしてこの食事代がけっこう高くて、ビバリーの記憶によると一食700ペソ、私の記憶では800ペソ(朝昼夜問わず)。とにかく2人で2泊して夜朝昼夜朝と5回食事をして8000ペソほど!円にして4万円ぐらい払いました。
 もちろん高いだけのことはあってこの食事をむちゃむちゃ力を入れて作ってくださいます。ご主人のジェイさんという方とコックさんが二人で作ってくださるのですが、これがもうめちゃくちゃ多くてめちゃめちゃ凝っていてめちゃくちゃ濃いい味の料理をなのです。正直いってとてもとても食べきれません。私は体もそこそこ大きく決して少食な方ではありませんが、それでも朝ごはんでさえも食べきれませんでした。マスターのジェイさんは親切な方ですし、このご飯さえもう少しなんとかなればホントにイイ感じなのですが……。