『フィリピンアートみちくさ案内』・Mia music&Books・音楽の話
かねてからこんな本を探していたのです。逆に今までこの本の存在を知らなかった自分に愕然としました。フィリピンの美術の状況を紹介するサイト『ARTy Manila』のサイト自体も最近知ったのですが……とか思って確認するとやはり『ARTy Manila』を運営されている方が『フィリピンアートみちくさ案内』の著者のおひとりでもありました。
軽快な本ですので携行するのにも便利で地図も豊富についておりますのでガイドブックとしてもかなりオッケーな感じじゃないでしょうか。旅行中に取り出して見るのにも最適なサイズです。あととにかく何が良いかというと、内容が日本語と英語の並記になっている点でしょうか。現地の方と一緒にこの本を楽しめるのが最高です。次マニラに行くときにはこの本をビバリーと一緒に眺めながら市中をブラブラしてみようと思います。英語表記があるのは現地の方に道を聞く折などにも便利です。ただ、フィリピンの方は地図が苦手な方がわりと多いようにも思いますが……。蛇足ですが、私が思うに旅行に行く際には100円ショップにい売っているような簡単なものでよいので方位磁石をひとつ持っていると便利かと存じます。地図だけでは自分がどこを向いているのかを見失うことがあります。やはり地図と方位磁石はセットになってこそ本来の利便性を発揮するのではないでしょうか。最近ではスマートフォンなどに磁石の機能もあるとは思いますが、パッと取り出せる磁石はやはり便利と感じます。
この本を買わせていただいたのが「Mia music&Books」さんというフィリピン専門のネット通販CD+ブックストアです。こちらのお店は以前から気になっておりまして、商品もさることながらサイト内の情報量がものすごく多くて眺めているだけでも楽しくなってしまうネットショップです。姉妹サイトやSNSも含めてフィリピンの現代文化の雰囲気がビシビシと伝わってきます。ただ私の音楽の好みがどちらかというとロック的な感じということもあり、いわゆるOPM(Original Pilipino Music)とされるポップミュージックの系統はどこから手をつけてよいのかと思案して買い物をするきっかけをつかみかねておりました。すると今回この自主流通本である『フィリピンアートみちくさ案内』がこちらで販売されておりましたので、一も二もなく購入させていただいたというわけです。
しかもといいますかなんといいますか、このMia music&Booksさんは本拠地が私の住んでいるところからほど近いこともあり、無理を言って直接受け渡しをお願いさせていただきました。最寄りのJRの駅での立ち話になってしまいましたが、商品をいただく際にいろいろお話を訊けて楽しかったです。
なぜそんなにフィリピンの音楽に詳しいのですか?と尋ねたところ、そこには特別な理由があるわけではなく、店主さんは元々音楽好きで、現地でたまたま耳にしたナイスミュージックの数々に魅せられてシンプルにただただのめり込んでゆかれたとのことでした。当たり前と言えば当たり前の話なのですがピュアにハートに響くお話でした。
お客さんの半分は音楽好き、半分はフィリピン好きの方々とのこと。私も自分の好みを伝えていくつかのアーティストをご推薦いただきました。特にアシン(Asin)というあグループとサンパギータ(Sampaguita)というグループをオススメいただきました。
フィリピンのいわゆるOFW(Oversea Filipino Worker:海外への出稼ぎ)の形にフィリピン人シンガー / フィリピンバンドがあったり、あるいは私の先輩のディスコDJの方にディスコ全盛期のお話を聞くと、当時神戸にも出稼ぎで来られているフィリピン人DJが居られてかなりご活躍されていたとのこと。現地のディスコに行っても踊りが上手な人が多いし、とにかくみんなすぐに歌を歌いだすのも楽しいです。堅そうな職業の方、例えば空港の警備員さんや公務員さん、スーパーのレジ係の方なんかもなんやいうたらすぐ歌ってます。そもそも音楽がものすごく盛んなお国柄なんですね。
私もタクシーに乗るたびにラジオからガンガンナイスなサウンドが溢れてくるのにいつも驚いております。私はどうしてもちょっとアングラ趣味的なところがあって、ラジオからかかるものではちょっとレゲエっぽい感じのものに耳を惹かれることが多いです。
セブのライブハウスではFiyahという頑なに古いレゲエばかりを演奏するルーツ・レゲエのバンドのライブに飛び入りしてギターを弾かせてもらったこともあります。たまたま出会ったバンドでしたがFiyahはかなりシブいバンドだと思います。Facebookをフォローしているとデモなんかがたまに上がることもあるんですが、どうなってんのかなと思うぐらいものすごいロウなサウンドで驚きました。
OPM的な感じのものとは違いますが、モスクワ・オリンピックス(Moscow Olympics)という何とも人を食ったような感じのバンドがフィリピンにいて、おそらくヨーロッパ方面でのリリースがあり、それを受けてこちらは日本版も出ています。逆にフィリピンで盤が売られているのは見たことがありません。バンド名はおそらくオレンジジュースというバンドの曲から採ったものだと思うのですが、ルーツがモロにニューウェイブということなのか、程よく暗めのひねりの効いた感じの音楽で、曲名もイチイチかなりイカしてます。わかりやすく言えばシューゲイザー系のバンドということになるのでしょうか。むちゃくちゃかっこいいです。大推薦。
少し古い60年代終わりから70年代初頭の音楽の話になるんですが、いわゆるサイケデリック・ロックの世界でアジアン・サイケものの名盤として知られているウォーリー・ゴンザレス(Wally Gonzalez)のアルバムとウォーリーが所属していたファン・デ・ラ・クルス・バンド(Juan De La Cruz Band)というバンドのアルバムはよく聴いております。今は公式に再発されていてダウンロード販売もされているウォーリーのアルバムですが、以前アナログで再発されていた際に再発にもかかわらず6000円ぐらいしていたのを見て驚いたものです。でも今思えば買っておけばよかったとも思っております。あのころ自分がこんなにフィリピン興味を持つとは思ってませんでしたので……。治安についての記事の『牢獄処刑人』のところでも書きましたが、ファン・デ・ラ・クルス・バンドはあのスピード・グルー&シンキのドラマー、ジョーイ・スミスが在籍したことでも日本では知られていますよね。ファン・デ・ラ・クルス・バンドは今も活動は続いており、時々ライブをしているようです。ラジオでもカバーバージョンを含めヒンミン・ナティンやバルン・マルリンなどのファン・デ・ラ・クルス・バンドの曲をよく耳にします。マカティでウォーリーのバンド、Manila Blues Experienceのライブを見ることもできました。会場にはジョーイ・スミス氏もおられましたよ!Manila Blues Experienceのボーカルの女性はむちゃくちゃ綺麗な方でした。ライブの一曲目がスティーブミラーバンドの『Fly Like An Eagle』だったのですが、なんともいえない妖しい雰囲気にノックアウトされました!ウォーリー・ゴンザレス氏はセッションライブなども含めほんとに活発にライブ活動をされており、毎週末どこかで演奏されている感じです。機会があれば見に行ってみてください。
その他ではパンク系レーベルBRONZE FIST RECORDSの「BRONZE FIST RECORDS・社長の訓辞」というブログ内で時々フィリピンのスキンヘッズの情報などが掲載されています。この辺りを手掛かりにライブハウスに行こうとするのですが、お店がなくなっていたりしてなかなか情報を追えてないのが現状です。また参考にさせていただいて私もライブハウスを探してみたいと思います。
アメリカにFANNYという70年代に活躍したバンドがあり、こちらがアメリカで初めてメジャー契約をした女性だけのバンド(ランナウェイズより先!)としてちょっと知られているバンドなのですが、メンバーのギターとベースの方がフィリピン人もしくはフィリピン系アメリカ人なのです。70年のファーストアルバムはCDで再発されているので持っているのですが、これがさわやか&骨太なナイスサウンド!加えて私が特に探しているのは76年の3rdです。こちらはCD再発されていないのですが、なんでもこれがあのトッド・ラングレンプロデュースとか。なんでもフィリピンに結びつけたらいいというものではありませんが、フィリピン+トッドっていうのを聴いてみたいなぁと思っておるのであります。ギターのJune Millingtonさんは今も音楽活動と並行してLGBTの活動家としてご活躍されているようです。こちらは厳密にはフィリピンとは関係ない感じもするんですが、フィリピンを手掛かりにいろいろ調べているとこんな出会いもありましたなんていうお話でした。
美術方面の本の話からすっかり音楽の話になってしまいましたが、以上が私が持っているフィリピンの音楽に関する知識のほぼ全てです。ちょっとずつ勉強してまたなにかあれば書いてみたいと思います。音楽情報はいろいろと募集中です。特にマニラ、セブのライブハウス情報など教えてください!
『フィリピンアートみちくさ案内』 — http://www.philippineart.michikusa.jp/